徹底解剖図画工作の教科書 No.02 「図画工作をはじめよう」その2 学習のめあてと資質・能力

このコーナーでは、令和2年4月から使用されている日本文教出版の「図画工作」の教科書について

できる限り分かりやすく紹介していこうと思います。

第2回は「図画工作をはじめよう」その2です。

 

令和2年度版「図画工作」5・6下p.5-6
令和2年度版「図画工作」5・6下p.5-6

「図画工作をはじめよう」は、各巻折り込みの次のページに設定されている、いわばオリエンテーションのページです。

ここには、図画工作の学習の中で何を学ぶか、どのように学ぶかがかかれています。

 

 

・図画工作の特徴(造形的な見方・考え方)について

・学習のめあて(資質・能力)について

・どのように学ぶかについて

・保護者の方へのメッセージ

 

前回は「造形的な見方・考え方」について

このページでどのように示しているかについて

ご紹介しました。

(前回はこちらから)

 

今回は「学習のめあて」について説明します。

 


学習のめあて その前に

前回、新しい学習指導要領で、育成を目指す資質・能力が「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の3つに整理されたとお伝えしました。

教科等の独自性はそれぞれの教科等の「見方・考え方」で担保されるということもお伝えしました。

 

つまり同じ「知識及び技能」であっても、図画工作では「造形的な見方・考え方」と関連した「知識及び技能」を育成する、ということになります。

 

なので、具体的に図画工作での3つの資質・能力とはどのようなものなのかを確認しておかないと、

「図画工作のつもりだったのに、算数だなこれは・・・」ということになりかねません。

とはいえ当たり前ですが、世界は教科ごとに分かれて存在しているのではないので

図画工作の時間は特にこの視点を大切にしましょうね」ということだと思います

前回お話しした信楽焼をどう見るか、ということです)。

(「今は算数だから造形的な見方・考え方で見るのはやめよう!」というのはなかなかに難しいですよね)。

 

3つの資質・能力について

図画工作での「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」は以下の通りです。

 

「知識及び技能」

対象や事象を捉える造形的な視点について自分の感覚や行為を通して理解するとともに,材料や用具を使い,表し方などを工夫して,創造的につくったり表したりすること

 「思考力、判断力、表現力等」

造形的なよさや美しさ,表したいこと,表し方などについて考え,創造的に発想や構想をしたり,作品などに対する自分の見方や感じ方を深めたりすること

 「学びに向かう力、人間性等」

つくりだす喜びを味わうとともに,感性を育み,楽しく豊かな生活を創造しようとする態度,豊かな情操

 

これらは、学習指導要領で示されている、教科の目標の(1)~(3)にあたるものです(文末だけ変えています)。

 これらのことを、子どもができるようになるようにしてあげることが、図画工作の役割であり、先生方のお仕事になります。

学習のめあて=3つの力についての説明

この「資質・能力」を子どもたちにも分かるような言葉に置き換えたのが「学習のめあて」になります。

 

「知識及び技能」

対象や事象を捉える造形的な視点について自分の感覚や行為を通して理解するとともに(見つけたり),材料や用具を使い,表し方などを工夫して,創造的につくったり表したりすること(くふうしたり

 

 「思考力、判断力、表現力等」

造形的なよさや美しさ,表したいこと,表し方などについて考え,創造的に発想や構想をしたり(考えたり),作品などに対する自分の見方や感じ方を深めたりすること(感じたり

 

 「学びに向かう力、人間性等」

つくりだす喜びを味わうとともに(活動の中で楽しんでする),感性を育み,楽しく豊かな生活を創造しようとする態度,豊かな情操

 

というように対応しています。

 


なんで分かれているの?

なんで3つなのに、それぞれ分かれているんだ?という疑問が浮かぶかもしれません。

これは「知識及び技能」が「知識」に関することと「技能」に関することに分かれているからです。

(例えば算数で、「三角形」を知っていることと、「三角形の面積を求められる」という「技能」は違いますよね)。

 

また、「思考力、判断力、表現力等」は「表現するとき」と「鑑賞するとき」とで分かれているからです。

 

「知識」は「対象や事象を捉える造形的な視点について自分の感覚や行為を通して理解すること」になるのですが

ここの「自分の感覚や行為を通して」を私たちは重視して「見つける」という言葉を当てました。

「技能」は「材料や用具を使い,表し方などを工夫して,創造的につくったり表したりすること」になるのですが

図画工作の歴史の中でもずっと使われていたこともあり「くふうする」という言葉を当てました。

  

「表現するとき」の「思考力、判断力、表現力等」は「造形的なよさや美しさ,表したいこと,表し方などについて考え,創造的に発想や構想をすること」ですが

これも「技能」と同様の理由から「考える」を当てました。

「鑑賞するとき」の「思考力、判断力、表現力等は少しややこしくて「造形的なよさや美しさ,表したいこと,表し方などについて考え,作品などに対する自分の見方や感じ方を深めたりすること」になるのですが(ここ入れ子構造になっています!)

感じること」という言葉を当てました。

 

ここが「考えたり、感じたりすること」ではなく「感じたり、考えたりすること」となっている理由を説明します。

何かに出会ったときって、先に「あれ?」って感じて「なんでだろう?」て考えませんか?「考える」というのは知的な行為ですが、その前にいいことも嫌なことも、「感じる」という感性を生かした反応が先にありますよね。

なので「感じたり、考えたりすること」という順番にしたのです。

 

 

この「学習のめあて」を見ることで、図画工作の授業ではこの3つのことを大切にして学習するんだな、ということが分かるようになっているのです。

ということがこのページには書かれているのです(回りくどいですね)。

 

「学びに向かう力、人間性等」については、長くなったので次回に回しますね…(終わるのかなこの連載…)。