「学ぶ場」と「普段の生活」の境界線がなくなること
今回、参加者の多くは自宅から参加しました。
私はこの効果を、特に強く感じました。
これまでの「ミュージアムや図書館などで開催されるワークショップにリアルに参加し、プログラムが終わったら家に帰る」という常識。
実はそのことが、個人的には、その時だけの “離れ小島の学び” なってしまっていないかということが気になっていました。
つまり、基本的には単発的に行われるワークショップにおいて、あの時の気づきや学びが、場所を変えることによって、定着度や持続性に対する影響はどのくらいあるのか、あるいはないのか、ということです。
しかし、今回は自宅。
活動のテーマ設定や宿題の内容を各々の普段の生活に密着した形で設定することで、ワークショップで得た気づきや新しい視点がフレッシュなうちに、「普段」になめらかに接続できるのではないかと考えました。
「家の中にあるもので、モノしりとりをする」だったり
「家の中でアソビに使えそうな要素をさがしてくる」だったり
「考えた掃除アソビを、家でまずためしてみよう」だったり。
これらのことは、活動中の子どもの視野がPCの画面だけに集中してしまうことを防ぎ、常に家の中の環境の要素と、オンライン上の学びを対比させながら考え続けることに寄与できたのではないかなと思います。
事実、保護者の方のお話をきいたところ、ワークショップが終わった後に家の中で「あ!これ使えそう!」と言っていたり、スーパーに買い物にいって「これほしい!」と言われたものが、アソビ化するための素材として使えそうだから、ということがあったそうです。
また、それぞれの自宅での出来事ということで、こんなこともありました。
「アレクシーせんせー、家の中、ぜーんぶ真っ白ですねー!」ってツッコんだり。
「アレクシーせんせー、後ろのはしごの上には何があるんですかー?」「ふっふっふ、実はね、この上には莫大な量のレゴがあるんだよ」って実際にレゴブロックで溢れたロフトを見せてくれたり。
参加者のひとりの画面に飼っている猫が乱入してきて、みんなで猫の話をしたり。
たまに保護者の方とお子さんのリアルなやりとりが聞こえてきたり。
その細かいひとつひとつの要素が、例えば、アレクシーさんや他の参加者を、普通に会う以上に体温や雰囲気を伴って感じることができたかもしれないし、「家に遊びに行ったことがある友達」に似た関係になっていったように感じます。
そうして構築された関係性は、「友達と気兼ねなく意見しあえること」、「友達の発表に興味を持って聞けること」など、さらに多様な学びへと発展させる効果として展開していけることでしょう。
そうそう、そんなフラットな関係性の構築が関係してか、3週目の最初に、ある参加者の子から
「せんせーみて!アレクシーせんせー見つけたんだよ!」
と、アレクシーさんが研究内容を紹介しているウェブサイトを持ってきてくれることがありました。
普段何気なく使っている様々な製品が、アレクシーさんとの出会いによって、誰かが作っている製品として血が通って見え始めるきっかけになるかもしれませんね。
オンライン授業での「繋がり方」が、学びの深まりの可能性を示唆する
新型コロナウイルスの猛威によって、オンライン授業を急いで整備された先生方も多いと思います。
普段の教室での教育方法を、いかにオンラインに置き換えることができるのかということに頭を悩ませて(フラストレーションが溜まっている??笑)いらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、「子どもが体験すること」を視座に、一歩引いてオンライン授業という方法をあらためてみてみると、いくつかのいままでになかった新たな効果がありそうかも??ということをご紹介しました。
オンライン授業は言わずもがな、授業者や学習者を含めた参加者全員の「繋がり方/出会い方」の方法のひとつです。
「誰とでも気軽に繋がることができる」ようになったことで、「どうやって繋がる/出会うといいのか、“繋がり方そのものの質”」という新たな価値視点を得ました。
このことは、“今を生きる”子どもたちの主体的で対話的な制作活動の先にある「自由でユニークな発想や表現」を考える上で、とても重要な、学びの深まりの可能性を示唆してくれているように私は思えるのです。
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複数の美術館や科学館で、
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