先日、私が館長を務める科学館で、スタッフ全員を対象にしたプログラミングの研修会を行いました。
当日はソニーのMESHという、誰でも簡単にプログラミングを使ってアイディアを形にできるIoTデバイスを使い、開発者の萩原丈博さんを講師にお招きして和やかにスタートしました。
大学でプログラミングに触れていたスタッフもいれば、プログラミングは初めてです!というスタッフも。
まずは、主にさまざまなセンサーの機能を持っているMESHの基本的な動作を体験していきます。
楽しく遊んでいるようでも、でも実はもうこれ、「〇〇したら◇◇する」というinputとoutputの基本概念を習得しちゃってるわけですね。
基本動作を学んだら、次は3人1グループで館内に出かけていきます。
お題は「館内のあらゆるものにMESHを掛け合わせて新しいコンテンツを考える、科学館×MESH アイディアソン」です。
2時間後の発表会に向けて、各々しっかり集中して、時々おやつを挟みながら取り組みます。
チームA:1階のエントランスホールをもっと楽しくする
手指の消毒をする場所や受付カウンターにセンサーが仕込まれており、当館のマスコットのような存在である手作り宇宙人模型が話しかけてくる。
同時に、あらかじめiPadに録音された音声で受付までの誘導をする機能もある。
また、鑑賞者が足踏みすることで発電され電車が動く展示装置にもMESHが配されており、30年以上たった科学館の常設展示に、新しい楽しみ方と「知りたい」という気持ちを醸成するきっかけを与えている。
チームB:通路をコンテンツ化する
プラネタリウムに行くために通るだけの赤い空中通路に、MESHでさまざまな仕掛けを配し、通路自体をひとつのアトラクション化している。
あるポイントを通ると、どこからともなく怪しい笑い声がしてきたりする。
プラネタリウムに入るまでの、来館者の気持ちを高めていく演出として可能性を感じさせる。
チームC:プラネタリウムの中で注意を自動でする
プラネタリウム内でしばしばおこることが想定される、「観客が寝ちゃっていびきがうるさい」などのあるあるネタを、自動で注意する。
普段はおだやかな美しい発声でプラネタリウム解説を行う解説員自身によって、事前に豹変して「いびききこえてんだよ!!」と怒る声を録音してあり、いびきを検知すると自動でその声が流れるしくみになっている。
いつもおだやかなあの人がまさか! という、館スタッフなら誰しもが大きな意外性を感じるユーモアを孕んでいる。
チームD:教育科学館ミステリーツアー
館内で起こったスタッフの失踪事件。参加者は彼の痕跡をたどりながら、館内をツアーしていく。
ツアーの中で、参加者がストーリーに没入していくためのしかけとして、あるタイミングになったら柱の影からからくり人形が語り部として登場するしくみにMESHが利用されていたり、ツアーの演者側の登場タイミングのすり合わせなど、実施側のオペレーションにもMESHが使用されていた。
演者の演技力もあいまって、私的には最も印象深い。
チーム 萩原&館長:展示物の声を聞く聴診器
MESH開発者の萩原さんと、前職でMESHを使ったコンテンツ開発に従事していた私は、スタッフに力の差を見せつけようと2人で製作。
でも蓋を開いてみると、他のチームのキャラクターがあまりにもたっていたため、そんなに差は見せつけられなかった。
MESHを仕込んだ聴診器を、化石や水槽などの気になる展示に当てると、その展示物の声がしてくる作品。
ニホンウナギのイケメンボイス、カブトガニのアニメ声による意外性のある自己紹介が印象的。
今回も、「自分の身の回りの環境をアイディアソースとする」「オープンエンドである」という図工プログラミングの要素を利用した企画となりました。
もともとプログラミング研修という名目での実施ではありましたが、4月に新たに発足したチームメンバーとしては、「スタッフ同士の相互理解、コミュニケーションが深まった」「私たちの科学館についてを改めて見直し、新鮮な可能性を見出すきっかけとなった」「MESHをきっかけにしてその周辺の工夫もたくさんしたいと思えた」という感想が得られました。
このことは、図工プログラミングを行う上で主に得られる教育効果として特徴的なものであるし、これまで子どもたちに対して行っていた実践は、大人に対しても大きな有効性が期待できることを示唆しているように思いました。
今後私たちの科学館では、このMESHやKOOVをはじめとしたプログラミング機材を導入し、既存の科学館常設展示と掛け合わせる形で、プログラミング教育の切り口のみならず、理科の習得度への影響、地元の資源を活用した創造的なSTEAM教育としても、さらなる学習効果の検証を行っていきます。
どんどんこちらの記事でご紹介していきますよ〜!お楽しみに!
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