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第六回 月の島

月の島
月の島

3年生の「くぎうちトントン」(日本文教出版 図画工作3・4上 p.32-33)の題材です。金づちで、木にどんどん釘を打つことを楽しみ、リズムよく打っていくうちに、思い付いたことを立体に表すものです。

 

 いろいろ ためす

 

 3年生で初めて使う、釘と金づちです。興味津々の子どもたちは、「最初はやさしくとんとんとん、最後はドンドンドン」と演示する私に身を重ねて見ながら、安全もしっかり確認して活動を始めました。

 

釘を押さえる指に、金づちを打ち下ろすタイミングを恐る恐る探っていましたが、間もなく図工室中に心地よい音が響き渡りました。子どもたちは並べるように打つ、高さを変えるなど手や体全体を働かせていろいろためすことを楽しんでいます。

 

Nさんは、角材の端っこに数本の釘を打っていましたが、そのうちの一本が木から突き出ました。その釘を抜いて、さらに打っていくと、今度は木にひびが入り、角がぽろっと割れてしまいました。でも慌てることなくNさんは「あ、角にうつとこうなるんだ。」といった表情をしています。Nさんは釘を半分まで打つと、ペンチでゆっくりと釘を曲げ始めました。どの釘も向きを変えて曲げられています。釘の数はけして多くはありませんが、打つ場所、曲げ方をじっくりと考えています。最後に木や釘にさっと色をぬり、「森の木」というタイトルが付けられました。くぎをペンチでまげると、どんな感じがするのか尋ねると、「釘を曲げると、きのこのような感じがする。でも、たくさんの釘を曲げていくと、曲がっていても太陽に向かっている木のようで、森だ!と思った。」と話してくれました。 

 

 

 

森の木
森の木
木の命
木の命

「木の命」 そして 「月の島」

 

次の週は、切り落としの薄い板と角材を組み合わせて、自分の表したいことを見付けていくことを提案しました。Nさんは、立方体の角材と、真ん中が丸くくり抜かれた板を選びました。丸の形に添って、巧みな手付きで釘を斜めに打っていきます。今度は曲げていません。10本ほどの釘を打ちながらペンでえがき、「木の命」を完成させました。後で板材の形を選んだ理由を聞くと、「真ん中の丸い穴は大切な命で、それをまわりから包んでいるような形に感じた。だから丸い形に添って釘を斜めに打って、人々が命を守っているようにした。赤い部分には打った釘を抜いて、穴を残している。その穴は植物や野菜など成長に必要な大切なものがあることを表した。」と話してくれました。

3つ目の作品は、4枚の切り落としの板を選び、立方体の角材に組み合わせることにしました。板には色がついているものがあり、きれいだったので選んだようです。「黄色の板の形は“月”の感じがした。その時、他の3枚の板を“島”にしようと思いついた。」Nさんは、わずか3本の釘で板をしっかりとめる、空中に浮かせるなど、打ち方を考えて「月の島」というタイトルをつけました。

 

子どもの活動を見とっている、作品を読み取っているつもりでも、私の想像を越えた世界が広がっています。少しでも見逃していたことを知りたく、そっと尋ねる、後でこっそり教えてもらうことを続けていきます。

月の島 3年生 O.N.さん 
月の島 3年生 O.N.さん 

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コメント: 6
  • #1

    sayaka.y (月曜日, 07 12月 2020 15:07)

    道具や素材と初めて出会う授業では、自分でためして見つける喜びをより感じてもらいたいです。しかし工具となると安全を優先させるあまり、つい自由度の低い授業になってしまうという反省があります。釘を使ってどんなことができるか、子供たちが体全体を働かせて考える授業は、教師がどこまでOKとするか見極める力、勇気、信じること…など、いろいろな要素があって成り立つのだと感じました。

  • #2

    神谷真帆 (月曜日, 07 12月 2020 20:20)

    素敵な記事をありがとうございます。子供たちの内にある想いや世界観を大切にしたいと思いました。釘打ちなど、安全性を考慮しなければならない題材は特に子供の気付きを見逃しがちになってしまいます。落ち着いて学習できる環境、材料と道具にのめり込める声かけ、そして子供のふとした表情の変化に気づけるようアンテナを張っていきたいと思いました。

  • #3

    太田優子 (火曜日, 08 12月 2020 20:15)

    新しい材料や道具を使い、失敗もしながら学んでいく子どもの姿が印象的な記事でした。
    今回も素敵な、そして勉強になる記事をありがとうございます。
    安全性を考慮することで、極力失敗はさせたくない、と思っていましたが、児童が失敗する中で、実際に体験しながら学んでいく姿が大切だと勉強になりました。
    安全性の考慮と、児童がのびのびと活動ができる2点を両立できるよう、子どもの様子をよく観察しながら、授業をしていきたいなと思いました。

  • #4

    図工のみかた編集部 (水曜日, 09 12月 2020 20:57)

    sayaka.y 様
    コメントありがとうございます。

    安全指導も大事ですよね。この辺りはきっと日頃の学級経営や先生と子どもたちとの信頼関係も大切になってくるのかなと思います。
    それらを十分に踏まえながら、子どもたちがくぎを打ち込むときの感触や、音、力加減などまさに体全体を働かせながら材料と関わることができるようにしてあげたいですね。
    是非授業のご様子などもお聞かせ下さい!

  • #5

    図工のみかた編集部 (水曜日, 09 12月 2020 21:01)

    神谷真帆様
    コメントありがとうございます。
    落ち着いて学習できる環境、本当に大事ですね!
    落ち着いてできるからこそ、内にある想いや世界観が広がり深まっていくんでしょうね。
    金づちやのこぎり、カッターナイフなど、様々な配慮が必要な用具も多いですが、ぜひ、取り組んでいただければと思います!

    引き続きよろしくお願いいたします!

  • #6

    図工のみかた編集部 (水曜日, 09 12月 2020 21:06)

    太田優子様

    そうですね。安全に気を使うと、ついつい「失敗」させたくないと思ってしまいますが、実は子どもたちにとっては「失敗」ではなく、新しい経験であり、「こうすると木が割れる」ということをしり、技能としては一つ新しいことを学んでいる姿なんでしょうね。どう声を掛けてあげるのか、というところも大切な気がします。
    ぜひ素敵な授業を頑張ってください!