写真は4年生の「絵の具でゆめもよう」(日本文教出版 図画工作3・4下 p.8-9)で表した作品です。絵の具のいろいろな表し方をためして、もようの紙をつくって表すものです。
材料は、画用紙、黄ボール紙、厚手の版画紙、つや紙(いずれもA4程度の大きいサイズで、細長いもの、四角いものなどに切っておく)、二層になった厚手の段ボール、片面波段ボール(いずれも小さめのサイズに切っておく)、基底材となる画用紙(四つ切)、水彩絵の具、刷毛、歯ブラシ、ぼかし網、ビー玉などです。
ためす、感じる、さがす
4年生の子どもたちに、水彩絵の具のこれまでの経験を生かし、様々な表し方をためすことを楽しみ、できた形や色の感じをみつけ、それを切ったり、組み合わせたりしてコラージュの方法で表すことを提案しました。
Kさんは最初に吸水性の高い厚手の版画紙を選び、刷毛で水を引き、画面を湿らせた上に黒い絵の具を塗りました。絵の具がすうっと画面に吸い込まれていくような心地よさを感じているようです。その上に水で調合した金色の絵の具を落とすと、黒い画面に金色がにじみ、広がっていきます。いくつも、金色を落として広げていきました。
その後、Kさんは片面波段ボールに絵の具をつけて、白いつや紙に写すことに夢中になりました。色を変えてずらして写す、意図的に片面波段ボールを滑らせて写す、できる形や色の面白さをさがしています。さらにその上に、ダブル段ボールの切り口に色を付けて、重なる形や色を感じながら写していきました。
できた形や色の感じ
次の週、たくさんのもようの紙を並べて見ると、Kさんは、「黒に金をにじませたもようは、夜空にさくたくさんの花。片面波段ボールのもようは、岩のイメージ」と話してくれました。
「夜空」「花」「岩」と感じた形や色が、「どうくつにさく花を表そう」という思いにつながったようです。
もようの気に入った部分を切り取り、画面の上で何度も動かし、組み合わせ方を考えながら、一気に表していきました。
ビー玉を転がしてつくるもようもビー玉に直接白い絵の具を絞りだし、それを指で転がしています。刷毛でぬり重ねたり、にじませたりしてできる絵肌のよさを感じ取りながら、Kさんが生み出した方法です。
最後に、画面の周りにスタンプで使った片面波段ボールを切り、どうくつを表して完成させました。
「1000年に一度の夜にさく3本の花」
Kさんは、「1000年に一度の夜にさく三本の花」というタイトルを付けました。
以下は、「お話もつけられる」というKさんが作品に寄せたものです。
むかし、花が大好きな少年がいた。少年は、1000年に一度だけさく花のあるどうくつを見つけた。今日が、ぴったりのその1000年の夜。3本の花があった。右の花は、にじいろにかがやく花。真ん中は、真実を見る花。左は、悪を見る花。少年がどうくつの中から花を見ている。どうくつの入り口に、夜空にいっぱいの花も見える。
私は、「ぴったりのその1000年の夜」、どうくつの中で少年と一緒に、3本の花を見てひそやかに想像を広げています。
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竹内由希子 (土曜日, 12 6月 2021 19:00)
子供たちの活動を、温かい目線や言葉とともに紹介してくださる「ともにかなでる図工室」
毎回拝見させていただいております。
Kさんが、絵の具で様々な表し方を試していく中で、自分なりのキーワードを見つけ、思いのままに活動していく様子が伝わってきます。
きっと3つの花の部分は、絵の具の模様や色の美しさを感じながら、Kさんの特別な思いを込めながら切ったのではないかと想像できます。
洞窟の中で秘密の花を見つけた気持ちになりながら、ドキドキわくわくしながら花をつくっているKさんに共感できます。
図工室にいるのに、絵の世界に入り没頭できる環境がある。そんな素敵な空間を作り出せる授業、とても魅力的です。
図工のみかた編集部 (水曜日, 30 6月 2021 17:14)
竹内由希子さま
いつもご覧いただいているとのことありがとうございます!
>洞窟の中で秘密の花を見つけた気持ちになりながら、ドキドキわくわくしながら花をつくっている
本当にそうした気持ちだったのかもしれませんね。
自分がつくりだしたものから花をイメージしたというのは、花を見つけたことと同義かもしれませね。
授業時間の中で、ほかの子もKさんのように自分の世界を見つけられたんだと思います。そういう空間が立ち上がってくるのが、よい授業なんでしょうね~。
引き続きよろしくお願いいたします!