この作品は、3年生の題材「大地のおくりもの」で表したものです。自然の土を採取し、比べて見たり、絵の具にして表したりしながら、土の形や色のよさや面白さを感じ取る、鑑賞に重点をおいた活動です。
栄養教諭や枝豆農家のOさんの食育と関連させ、共に協働して編み直し続けています。
Tさんの問い大地の土には、どんな「いいな」、「面白いな」「ふしぎだな」があるだろう
夏休みが明けて最初の授業、子どもたちは自分で採取し、天日に干して乾かした土を持って来てくれました。
ゴロゴロしている土を石でくだき、初めは網目の粗い味噌こし網で、次に茶こし網で丁寧にふるいます。「煙がでてくる。」「さらさらだ。」「ふかふかになった土はあったかいよ。」など、ふるうことを楽しみながら、変化していく土の感触を味わいました。
土を採取する、ふるいにかける、ガラス瓶に詰めて見る、絵の具にして表す、枝豆農家の土への思いを聴く、枝豆を育てるなどの過程で、土と深く対話できるよう、『大地の土の形や色には、どんな「いいな」、「面白いな」、「ふしぎだな」があるだろう。』という問いをたてました。
「なぜ色がちがうのだろう」
ガラス瓶に入った70人の土が並ぶと、「きれいだな」「こんな色の土があるの。」「だれの土かな」と土に見入っています。
さらにこの土に水糊を混ぜて絵の具にして表してみながら土を味わっていきます。
Nさんは、家の花壇の土を採取してきました。
最初に自分の土を木のスプーンで菊皿に取りました。水糊で混ぜていくと「色が変わる、暗い色になった。雨の日のしっとりした時の土と同じ。」と言います。小さな和紙に、ていねいに土を塗っていきます。
3つの土の色の違いを感じながら表したのは、「高さによって色が変わる山」です。
その後もNさんは「友だちの土はどんな色かな」「同じように見える土も、糊を混ぜると違う色になる」「Oさんの土が一番明るい色」「土はなぜ少しずつ色がちがうのかな」と、次々と表しながら土の形や色などのよさやふしぎさを感じ取っていきました。
「しあわせがおとずれる所」
Nさんは「大地のおくりもの」の授業を終えて、次のようにコメントを添えています。
土をふるうのは楽しい。
土が絵の具になるとは知らなかった。
大地にあるものを思いついて、どんどんかいてみた。
山、自分の家、街、葉っぱ、生き物、風、虹、子どもの遊び場。
みんな集まると、平和だなあという感じがする。
だから「しあわせがおとずれる所」というタイトルにした。
大地の土の色は「茶色」ひとつではなく、いろいろな色があることが分かった。
O(枝豆農家)さんは、農薬も、肥料も、水もやらない、雑草もとらない。
でも、こんなにおいしい枝豆をつくる。
Oさんのやり方はすごいと思う。
だれでもまねできると思わない。
私は畑に関心をもった。
材料・用具
児童:身近にある大地の土をほんのひとにぎりを採取する。ガラス瓶、筆、タオル
教師:石、水糊、厚手の和紙(正方形、長方形等小さなサイズに切っておく。)、ふるい(100円ショップの味噌こし網、茶こし網など)、ロート(画用紙を丸めて作っておく)、間伐材で作られた木製スプーン、
学習活動のねらいや安全面を配慮して保護者へ周知する手紙を事前に配布。
(身近な自然や季節を感じながら採取をできるよう、6月に提案し、9月に授業を行った。)
※本実践は、OECDによるGlobal Teaching InSightsという授業ビデオ研究における、気候変動教育への取組みとして紹介されています。
動画はこちらからご覧いただけます(海外のサイトです)。
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はな (土曜日, 12 2月 2022 21:47)
大地にあるものを思い浮かべて描き始めたNさん。身近なものから遠くにあるものまでいろいろ描き足していくうちに、平和というイメージがあふれてきたのでしょうか。単に平和ではなく、幸せがおとずれるところというタイトルにしたところにNさんの思いが込められているような気がします。枝豆農家さんと栄養教諭とのセッションでたくさんの気づきがあり、このような形に表されたのですね。地球を肌で感じることのできる本当に素敵な授業だと思います。
図工のみかた編集部 (日曜日, 13 2月 2022 13:53)
はなさん
コメントありがとうございます。
>幸せがおとずれるところというタイトルにしたところにNさんの思いが込められているような気がします。
幸せがおとずれる、っていいですよね。いろいろな方とのセッションの中で「おとづれる」というイメージも出てきたのかもしれません。未来を見ているのでしょうか…。
>地球を肌で感じることのできる本当に素敵な授業
材料を単に働きかける対象、物質としてみるのではなく、土をハブとして食ー命(や地球)とつながっていき、もう一度土に戻っていくような授業だったのかなと勝手に想像しています。
どの授業でもそうなのでしょうが、図工というのは閉じられた時間と空間の中でおこっていることではなく、子どもが知っていること学んだこと、すべてとつながっているんだと感じますね。
引き続きよろしくお願いいたします。