絵の具とローラーを使い、いろいろ試しながら、表したいことを見付けて絵に表す活動「ローラー・あーと」で表した作品です。
〔感覚や行為〕の経験
2年生とは、この4月に出会って3か月が過ぎました。いろいろな題材を通して、その子らしいよさを発揮してくれています。
「ローラー・あーと」の活動では、子どもたちがすきな色を選び、ローラーでのばしたり、色を重ねたりして、段ボールの上の色や形がどんどん変わっていくことを楽しみます。自分の「いいな」「たのしいな」を感じながら、絵に表すことを提案しました。
ローラーは子どもたちにとって身近で扱いやすい用具です。造形遊びでの経験もあります。ここでは大きな基底材に自分の手や体の動きから生まれてくる形や色をじっくり感じ取り、自分の表したいことを見付けてほしいと願いました。
W(ダブル層)の板段ボールは、堅ろう性がありながらも、ほどよく絵の具がのり、水分も適度に吸収します。子どもが色を重ねるごとに段ボールがそれに呼応するようです。絵の具とローラーと段ボールに働きかけ、働きかけられることを通して「自分の感覚や行為の経験」を積み重ねられると考えました。
絵の具とローラーと一体になる
ローラーを手にした子どもたちは、すぐに机の上、自分の手のひらや体にローラーをころころと滑らせたり、クルクル回す音を楽しんだりしています。体で用具を確かめているのです。
基底材となる段ボールは数種類のサイズに切って、子どもが選べるようにしておきました。Kさんは、迷わず一番大きな段ボールを選びました。その後ろ姿には、何か挑むような感じがありました。最初に青い絵の具を持ってきて、段ボールに垂らすと、片手で勢いよくローラーを動かし始めます。全面を青で塗った上に白を垂らし、重ねていきます。次々と色味のある色をおいては、その上に必ず白を重ねているのです。私は「どうして白を重ねるのだろう」と思いながら、見守りました。そのうちに、Kさんのローラーの持ち方や体の動きが変化していることに驚かされました。両手でローラーの柄の部分をしっかりと握り、手前から奥へゆっくり力を込めてローラーを押しているのです。ころころ転がすではなく、ローラーがぶれないよう腰を落とし、慎重に動かしているのです。
そのうちに画面は3つの色に分かれました。Kさんは時折、絵の具缶に入っている筆で、すうっと線や点を置いています。ずっと立ったまま活動し続けているKさんは、まるで絵の具やローラーと一体になっているようでした。Kさんが力を込めた画面はへこんでいました。
「オーロラ」
Kさんは、幾重にも色を重ねた作品に「オーロラ」というタイトルをつけ、このように話してくれました。
力を入れてローラーをおしていたら、ダンボールのぼこぼこしたもようがでてきた。
それがおもしろくて、力をいれてローラーをつかった。
青をぬって、上から白をぬったらすけてみえた。
青と緑をぬった上に白をぬっても、すけてみえた。
青とむらさき、青と黄色はどうなるかやってみた。
すけてみえる色はきれい。
3つの色にわかれたとき、「オーロラ」にしようとおもった。
じぶんのやりかたでできるのはたのしい。
※本活動は「学び!と美術」<Vol.119>鼎談:「技能」の話 でも紹介されています。併せてご覧ください!(編集部)
https://www.nichibun-g.co.jp/data/web-magazine/manabito/art/art119/
材料・用具
児童:タオル
教師:共用の絵の具(缶に溶いて筆を入れておく)、ローラー
片面白板段ボールを45×45㎝、40×60㎝、30×90㎝に切っておき選べるようにした。
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