写真は2年生の題材、「小さなかみからひろがるせかい」で表した作品です。
共用の絵の具を使い、小さな紙にどんどんかくことを楽しみながら絵に表すものです。
小さな紙にどんどんかく
2年生の子どもたちに、小さな紙に絵の具でぬったり、かいたりしてどんどん表すことを楽しみながら思い付いたことを絵に表すことを提案しました。
小さな紙は、子どもたちが絵の具でいろいろ試すことを楽しめるように、堅ろう性のある板段ボールを小さく切り、たっぷりと用意しました。共用の絵の具はアクリル絵の具を濃い目に調整して溶き、教室の中央に60缶ほど、筆を入れて置きました。子どもたちは好きな形の段ボールや絵の具の色を選び、さっそく思い思いに表し始めます。
「みて!こんなのできた!」「こんなこともできる!」
最初に、Kさんは小さな紙の真ん中にカニをかきました。「カニだから、海や太陽もかこう。」と思ったのでしょう。Kさんは、小さな紙ですが、色を考えながら、じっくりと時間をかけて1枚をかきあげました。そして2枚目の紙を取りに行く時、友だちの活動を見て歩いています。友だちは好きな色でぬりこめたり、色を重ねたり、絵の具をたらして紙を動かしてたらすなど、いろいろなことをしていました。席に戻ったKさんは、2枚目の紙全面に青をぬり、上から水色、黄色、緑などをポンポンと筆で重ねました(右下の紙)。3枚目、4枚目は灰色をぬり、絵の具をたらしたり、紙をゆすって色を動かしたりして表していきました。最後に、水色をぬった上に、筆先を慎重に使って魚とカラフルなサンゴ礁を表し、じっくりと海の絵をかき、2時間を終えました。
「海の中のうま」
次の週は、表した作品を基底材の上に並べて置き方を考えながら貼り、小さな紙から思い付いたことを表していきます。
Kさんは、何度も紙を動かし、どう置こうか考えています。しばらくして、「この形は面白い!」と感じているような表情をしました。動物の形のように見えたのでしょうか。台紙に貼り終えると、その形を確かめているのかのように、点々で回りを囲っていきます。さらにその周りを赤、水色の線で囲むと、一輪の花をかき、刷毛を使って画面全体を青で一気にぬりあげて、完成させました。
Kさんは、「海の中のうま」というタイトルを付けました。私は、Kさんが白く残した部分の形が面白く、馬と海にはどんなつながりがあるのだろう?と楽しく想像し、Kさんに尋ねてみました。私は、馬の形をはっきりさせるための余白だと思いましましたが、もっとすてきな世界が広がっていたのでした。
ならべたら、うまの形になりました。りくのどうぶつだから花もかきました。
海をたびすることにしました。
でもうまはおよげないから、おぼれないように
つつんであげました。
にもつ(カニ)をのせて海をたびしています。
材料・用具
児童:木工用接着剤
教師:共用の絵の具(ここではアクリル絵の具を使用)、片面が白の板段ボール(小さく切っておく)、基底材となる白ボール紙、筆、刷毛等
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竹内 (木曜日, 02 3月 2023 20:33)
展覧会でこの作品を実際に見させていただきました。
この作品、なぜかとても気になる作品でした。
小さな紙に描いた海の様子を並べ、馬の形に見立てていったのだろうか…とこの子が活動する姿を思い浮かべていました。
溺れてしまうから、つつんであげた…という、この子のなんとも素敵な優しい思いがあったんだなとこの記事を見させていただきわかりました。
子どもの目線は実に自然で、真っ直ぐに日々を見つめているんだなと図工の授業の中で気付かされます。
そして、そんな子どもたちの思いを受け止められる立場でありたいなと感じています。
ただ毎日の授業で、目の前の子どもたちにきちんと向き合えているのだろうかと常に自問自答しています。
この場で恐縮なのですが、ぜひ先生が子どもたちの活動を見取る際や対話の中で大切にされていることについてお話を伺いたいです。
図工のみかた編集部 (火曜日, 14 3月 2023 09:02)
竹内様
コメントありがとうございます。
私もおじゃまして実物を拝見していた時から気になっておりました。
>溺れてしまうから、つつんであげた…という、この子のなんとも素敵な優しい思い
本当に素敵ですよね。「形や色」という概念的なことだけでなく、まさに豊かなイメージの世界の中で、このウマへの優しい思いが生まれたのかもしれませんね。
>ただ毎日の授業で、目の前の子どもたちにきちんと向き合えているのだろうかと常に自問自答しています。
そういう自問自答を繰り返してらっしゃること自体がとても素敵なことだと思います。
そんな先生に寄り添ってもらえている子どもたちは、きっと幸せな図工の時間を過ごしていると思います。
引き続きよろしくお願いいたします。