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第三十五回 すきなものおしえてね

写真は2年生の題材「すきなものおしえてね」で表した作品です。教科書の「どんどんかくのはたのしいな」(日本文教出版 図画工作1・2上 p.8-9)に関連しています。

 

クレヨン・パスを使い、小さな紙にどんどんかくことを楽しみながら絵に表すものです。


 

 

初めての図工室

 

2年生になって、図工専科教員による最初の授業です。子どもたちは新しく着任した担任の先生と一緒に図工室にやってきました。図工室の空間を興味深々、きょろきょろと見回しています。

私は子どもたちを側に集め、小さな紙にクレヨンを使い、絵をかきながら自己紹介をしていきます。私の愛犬を、黙ってゴシゴシぬってかき始めると、子どもたちは「くま?」「きつね?」「あー犬だ!」「上手!」とほめてくれました。私は「モモ、という名前なの。」と言い、次に、窓の外をながめながらいろいろな色を優しく重ねて、なめらかな線をかきました。「道?」「にじ?」「空だ!」「きれい!」「もうかきたいよ!」

「みなさんのすきなものやかきたいものをどんどんかいて、先生に教えてね。」と題材を手渡しました。

 

 

Мさんの すきなもの かきたいものに 出会う

 

 子どもたちがかき始めると、私は図工室を回り、一人一人を見守りました。1枚をかき終えると、子どもたちは私に見せに来てくれます。対話しながら、その子らしいよさを見付けて2年生の子どもたちと出会っていきました。

 

 Mさんは、身体をぴょんぴょん跳ねるようにして「これ、なーんだ?」(①)と見せてくれました。よく見ると、何度も色がぬり重ねられていて、何とも惹きつけられる絵です。Mさんは、「これはね、パンケーキの上にのせたバターがとけているところ。」と話してくれます。私は「えー、すごい!バターがとけているんだ!バターがすきなんだね。」と伝えると、さんは満面の笑みです。

 2枚目(②)は水色の紙を選び、じっくりと時間をかけています。筆箱から鉛筆を出して、クレヨンと一緒に使っています。Mさんは「せんせい、みて!これはね、おたまじゃくしの足がでてきたところ。おなかが光っているでしょ。鉛筆でかいて光らせたんだ!」私は「そうなんだ!光っているところは、鉛筆でかいたんだ。」と伝えると、さんは急いで席に戻り、水色の上に白いクレヨンで線をかき、「これは水が光っているんだよ。」と教えてくれました。

 茶色を薄く伸ばしていることの意味を私が尋ねると、さんは、「ここはね、池がにごっているところ。クレヨンで、点々をかいてそれを指でこすってうすくしたよ。」と話してくれました。

 

 2時間目の中頃に、担任の先生が子どもたちの様子を見に来てくれました。子どもたちは自分のかいた絵を「せんせい、みて!」と次々に紹介しています。担任の先生はとてもにこやかに静かに、「わーすごいね。」、「おもしろいね」、「すてきだね」「そうなんだ」と一緒に喜びながら一人一人の子どもに接しています。私は、素敵な先生だな、いい時間がながれているなと、とても嬉しくなりました。

 

 最後にMさんは、大きい紙を選び、勢いよく腕を動かしてハンバーガーをかき上げました(③)。てっぺんにちょこんとのったMさんの「M」のマークに、私はいとおしさを感じました。そしてさらに驚かされました。「せんせい、見える? ふつうのゴマと、光るゴマがついてるよ。」とMさんが話してくれます。よく見ると光るゴマがあります。鉛筆でなぞった黒いゴマです。

 

 2年生の子どもたちのすきなもの、かきたいことに溢れた時間を共にし、私はこの1年間も子どもたちと一緒に図工を編んでいこうと思いました。


材料・用具

児童:クレヨン・パス

教師:画用紙、色画用紙(小さめのサイズで様々な形に切っておく。)等


(左から)①(12×16㎝) ②(14×16㎝) ③(27×22㎝) 「すきなもの」2生生 Mさん 

 

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コメント: 1
  • #1

    ふくざき あや (土曜日, 24 6月 2023 23:39)

    すきなものおしえてね!と
    先生が小さめの画用紙を手渡してくれたら
    この先生にすきなものを伝えたい!と 
    かくことが楽しいな!好きだな!と
    子供たちはどんどんかきたい気持ちがわいてくる

    図工の先生との出会いが
    紙の大きさから
    対話の中から
    生まれていく

    ただそれだけなのに
    本当に素敵な始まりです