写真は6年生が教科書の「言葉から想像を広げて」(日本文教出版 図画工作5・6下 p.42-43)で表した作品です。
詩や短歌、物語を読んで想像したことを絵に表すものです。
詩 「最初の質問」
長田弘さんの詩「最初の質問」を読んで絵に表す授業を毎年6年生で行っています。
詩の冒頭から、「今日、あなたは空を見上げましたか。雲はどんな形をしていましたか。」と問いかけられます。未来に生きていく子どもたちに、この詩に出会って卒業してほしいという思いが、私にはあります。
初めに、私は図工室の机間をゆっくり歩き、一人一人の様子に気を配りながら詩を読み聞かせました。次に子どもたちが各自で音読したり、声に出して読んだりして、気にかかる言葉、そうだなあと感じるところ、それはどういうこと?等、少しでも気にかかった言葉やセンテンスにサイドラインを引いてもらいました。その後、言葉から感じたことを形や色としてとらえ、表していくことを提案しました。
「風はどんな匂いがするの」
Kさんは、音読しながら数か所にサイドラインを引くと、ふっと遠くの方に視線をやり、何かを思いうかべるような様子でじっと考えています。Kさんが気にかかった言葉は、「風はどんな匂いがしましたか。」「ゆっくりと暮れていく西の空に祈ったことがありますか。」「じっと目をつぶる。すると、何が見えてきますか。」「人生の材料は何だと思いますか。」の4か所です。
しばらくしてKさんは、水彩色鉛筆で山のような形をかき始めました。そして空をパステルで塗りながら、山と空が響き合うようにして同系色で表していきます。思いに合わせて描画材を使い分けています。画面中央に大きな太陽をかくと、ゆっくりと暮れていく西の空と太陽と山、木々がひとつらなりになって、絵が構成されました。黒鉛筆で山の頂上に熊、大地にはうさぎや鹿、空に鳥をシルエットとして表しています。
そういえば、Kさんは鳥が好きで、よく「あっ、○○が鳴いている。」と鳥の声に耳を澄ませていることがあります。そんなKさんを素敵だな、と私は思っていました。
最後にKさんは、「風はどんな匂いがするの」というタイトルを付けて、絵の上に自分の詩を一気に書き添えました。
Kさんの作品を見ていると、私は夕日に染まる風を心地よく感じながら、深呼吸ができます。
以下は、Kさんの感想です。
「風はどんな匂いがしましたか。」という質問は、誰がどう感じているのかを想像してみました。
動物や自然や自分が感じているように表そうと考えました。
気にかかった言葉がつながって、自分の想像が広がりました。
材料・用具
児童:筆記用具
教師:詩、水彩色鉛筆(24色)、パステル(60色)、画用紙(八つ切りの半分のサイズ)等
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ふくざき あや (木曜日, 22 6月 2023 21:13)
長田弘さんの詩「最初の質問」が、鈴木陽子先生の図工室にありました。
子どもの頃、空が遠いなと感じた記憶がなんとなく残っています。忘れたくないなと思っていること、すっかり忘れてしまったこと、今大切にしたいと感じていることが、次々と質問されていくような気がしました。
家族にもこの詩に出会って欲しくて、読んでみたり、質問してみたりしました。
詩の問いかけは、自転車をこいでいる時に、電車に乗っている時に、日々の生活の中で、突然やってきました。
時代がどう変わっても、この詩は変わらずに私の心にあり続けていくように思いました。
鈴木先生の図工室で、この詩に出会うことができてよかったです。
図工のみかた編集部 (土曜日, 24 6月 2023 16:53)
ふくざき あや様
コメントありがとうございます。
詩に触れて、味わったことを形や色で表すことが、詩と自分との往還を生みだしていて、この実践は私もいつもいいなぁと思って拝見しておりました。
絵に表さずとも、詩に触れることで周りの見え方が変わっていくのはとても素敵ですね。世界の肌触りを少しずつ変えていってくれるのが、詩や美術などなのかな、とふくざきさんのお言葉を拝見して感じました。
子どもたちにもたくさんそういう経験をしてほしいですね。
引き続きよろしくお願いいたします。