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第四十二回 台風の目

この作品は3年生が「形が動く、色が動く」で表した作品です。教科書の「形が動く、絵が動く」(日本文教出版 図画工作5・6上 p.26-27)を参考にしています。コマ撮りアニメーションの仕組みを使って、楽しい動きや変化をつくり、工作に表すとともに鑑賞する活動です。


 

 

 これが動いたら

 

3年生の子どもたちには、黒板のスクリーンに、私が実際に材料を少しずつ動かして撮影しているところを見せ、「身の回りにある、これが動いたら面白いなと思う材料を、少しずつ動かしてアニメーションをつくることを楽しもう。試しながら表したいことや表し方を考えよう。」と提案しました。

 

 何度も試して つくりかえる 

  

 さっそく子どもたちは、筆箱の中から鉛筆を少しずつ出してまた元に戻していく、材料をどんどん増やして最後にはぱっと消える、平らな紙を少しずつ折って立体にしていく、材料をテグスで吊りながら上に上げていく、消しゴムに顔をかき裏返して表情を変えるなど、目の前にあるものを駆使して次々と動きの感じを試していきました。

 

 Cさんは、最初に図工室にあった小さな木材のキューブ数個を雪に見立て、積んだり積み替えたりしています。赤いモールでキューブの周りをくるっと結び、「雪だるまづくり」というタイトルを付けました。次の作品は、消しゴム、どんぐり、セロハンテープ、折り鶴などが左右へ飛び交っています。「だーれだ?」というタイトルは、以前全校集会で楽しんだ活動を、コマ撮りで再現しています。

 

 子どもたちはひとつ作品ができると、「見て見て!」と、友だちや私に紹介してくれます。子どもたちはもっと面白いものにしようと、何度も試してはつくりかえることに夢中です。

 

 

「台風の目」

 

 しばらくして、Cさんのところに戻ってくると、再び木材キューブを使って、動かし方や動かす距離などを何度も確かめています。Cさんは、小さな材料にぐっと顔を近づけ、離れてはまた近づき慎重に撮影を繰り返しているのです。今、没頭しているCさんの活動を途切れさせないよう、静かに見守ることにしました。

 99コマを撮り終えたCさんが、ほっとしたような表情で、私に作品を見せてくれました。「運動会~台風の目~」というタイトルです。春の運動会で自分たちが行った競技の様子を思い浮べながらつくったものです。Cさんは赤組で、実際には白組が勝ちました。でも作品では、赤組が三角コーンを白組に抜かれながらも苦戦して周り、ゴールします。白組は先にゴールしましたが、あいにく三角コーンを回らずにゴールしてしまったので、赤組、Cさんの勝ちです。競技が終わると、高学年の大道具係が、素早く用具を片付け去りました。そして、一番最後に、キューブがとんとんと上に積まれて作品が完成しているのですが、どんな意味が込められているのか、Cさんに尋ねました。

 

さんは迷わずに「高揚感、達成感かな」と話してくれました。

 

 私はCさんの作品を何度も見返しました。Cさんにとって「動いたら面白いもの」は、心に残っていることや気持ちでもあったのだと分かりました。

 そして、この作品に至るまでに、Cさんのタブレット端末にはいろいろ試した作品が6つもありました。

 


材料・用具

タブレット端末、身近にある材料、スクリーン等 

《台風の目》 3年生 Cさん 
《台風の目》 3年生 Cさん 

 

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