この作品は3年生が、題材「クモさんの工作」で表した作品です。細い針金がつくりだす形のよさや面白さを感じながら、表したいことを考え、立体に表す活動です。針金は学習指導要領では高学年であつかう材料になっているので、この題材では3年生の子どもたちでも扱いやすいような手芸用の細いものを使用しています。
クモさん
図工室には、時々クモが現れます。子どもたちは「気持ちが悪い!」、「悪い虫を食べるから、いい虫なんだ!」などと大騒ぎになります。自然の中で、木々の枝や植物に紡がれた美しい形のクモの巣を見たことがある子どもたちも多くいました。
そのクモさんになったつもりで、細い針金で形づくった木や植物などに、接着剤で糸をからめながら思い付いたことを表すことを提案しました。
線のいい感じ
最初に子どもたちを側に集め、初めて扱うラジオペンチと細い針金の可能性、見通し、安全について演示しながら、題材を手渡します。子どもたちは、身近にある鉛筆や角材、ラジオペンチの先などを使っていろいろためしながら、自分がいいと感じる線の形を探していきます。
Kさんは、針金を手にすると、指でひねったり、ペンチの先で直角に何度も曲げたりしています。「曲げるのがむずかしいな。」と言うKさん。細い手芸用の針金とはいえ番線なので、手応えを感じるのでしょう。それでもしばらく試していくと、ペンチの持ち方や動かし方もどんどん巧みさを増しています。Kさんが手掛けた針金には、じっくりと試みたことから生まれた楽しい形がたくさんありました。
その後、Kさんは形づくつた針金を、土台の上に1本ずつ置き方を考えて、さしていきます。いくつかさした後には、少し離れてどんな感じがするかしばらく眺めていました。するとこれまでよりも高さのある針金の形をつくり、その土台に、付け加えます。Kさんの、勢いのある曲線はどんどん上に伸びて、立ち上がりました。この時、Kさんは「とう(塔)の感じがする。」と思ったようです。
「ひかりのとう」
次の週は、前時に表した針金に接着剤を付けていきます。接着剤で思いのままにえがくように形をつくる体験は、「いたずらをしているような気分で楽しい。」「こんなことしていいんだ。」と子どもたちは話してくれます。
Kさんは、接着剤をつけると、雫のように下に落ちるので、それをすくいあげながら針金にからめています。だんだん糸を細く長くつなげるコツをつかみ、次々と全体に糸をつなげていきました。
接着剤の糸でいっぱいになった時、「ひかりのとうにしよう。」と考えたようです。たしかにKさんの作品は、きらきらと光って見えました。
最後にKさんは自分で持ってきたビーズやどんぐりなども付けて、にぎやかな塔になりました。
Kさんは、線の形が変化した時、また、材料の特徴を感じた時、自分の表したいことを思い付いています。表す過程で、様々な「いい感じ」が響き合いながら、Kさんは「ひかりのとう」の世界を広げたのでした。
材料・用具:手芸用針金(黒紙巻き#24を扱いやすい長さ30㎝程度に切って置く)、透明接着剤(カネスチック)、木の実、ビーズ、土台(スチレンボード)、ラジオペンチ等
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ふくざき あや (水曜日, 07 2月 2024 20:24)
針金は、高学年の題材という先入観がありました。学習指導要領で示されている材料も、学年に応じて扱いやすいような素材を選べば、題材の可能性は広がることに改めて気づきました。
他の立体の題材で接着剤を使った時に、子どもたちが活動の中から、接着剤でクモの糸を引くように形をつくり始めたことがありました。それは、すごく自然な行為に見えました。