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第四十八回 しずかな海

金づちで、木にくぎをどんどん打ちながら、思い付いたことを立体に表す活動です。教科書にある「トントンどんどんくぎうって」(日本文教出版 図画工作3・4上 p.22-23)を参考にしています。


 

 

初めてのくぎ打ち

 

3年生の子どもたちにとって、初めてのくぎ打ちです。子どもたちを側に集め、金づちやげんのう、ペンチなどの工具を実際に扱いながら、演示して紹介します。金づちを使う前の安全チェック(金づちの柄のてっぺんを、別の金づちでトントンとたたく)や、工具の置き方などの安全指導も大工さん気分で行います。

くぎを持つ手を打たないように、「さいしょはトントントンさいしょはトントントン・・つづけてドンドンドン、ドンドンドン!」と最初は小さな声で、少しずつ大きな声になって、子どもと一緒に言葉遊びをするように、リズムよく打って見せます。

「くぎをどんどん打つことを楽しみ、いろいろな打ち方をためそう。水性クレヨンも思いに合わせて使いながら、表したいことを考えていこう」と提案しました。


 

 

Yさんのこころみ

  

 Yさんは、1本目のくぎを、そっと角材に打ち始めます。とても慎重に、静かに、ゆっくりと打っています。打ち終わると、その横に2本目を打ちました。さらに横に3本目を打つと、角材にひびが入りました。Yさんは、「われた!」と私に見せにきました。でも、そんなに気にする様子でもなく、Yさんはそれが面白いと感じたのか、又別の木目に添って、釘を並べて、数本を打っています。同じようにひびが入りました。「われるんだ」とYさんはつぶやきました。同じ木目に添ってくぎを打つと、角材が割れることを、実感をもって分かったのでしょう。

 

 次にさんは、横へまっすぐ並べるようにして打っていきますが、最後まで打ち終えず、高低差が出てきた形を面白いと思ったのか、ほんの少しずつ高さを変えて打つことを楽しんでいます。時々、打った釘にぐっと顔を近づけて見ています。今、どのような感じがするかYさんに尋ねてみると、「うねるような感じがする」と話してくれました。

 

 その後、さんは釘の上を青のサインペンでぬりました。角材の側面を水性クレヨンの青でごしごしぬり、その上に白で力強く波のような形をかきました。さらに対面にも水性クレヨンで青をぬっていきます。こちらは、青、水色、緑を重ねて、やさしくぬり終えると、作品を完成させました。

 


 

 

「しずかな海」

 

 Yさんがつけたタイトルは、「しずかな海」でした。

 私も、Yさんと同じように釘に顔を近づけて見ました。本当に、押しては寄せるような美しい波を感じます。

 活動を振り返ってYさんは、以下のように言葉を添えてくれました。

 

 

かなづちは、重いな。

ゆびをうたないように、注意してうった。

くぎをならべてうつと、だんだん下がってきた。

うねるかんじがした。

木に、すごい大きい波がうねる海をかいた。

ドドーン、シャーという音。

もうひとつは、クレヨンの色を少しずつ変えて、かさねてぬった。

緑をぬったら、やわらかいかんじになった。しずかな海になった。

波の音はきこえない。

風をかんじる。

 

しょっぱいにおいがする。


材料・用具:

教師:角材(5×5×10.5cm)、釘(32mm)、かなづち、げんのう、ペンチ、水性クレヨン、色サインペン など 


《しずかな海》 8×10×5cm3年生 Yさん

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コメント: 2
  • #1

    ふくざき あや (金曜日, 25 10月 2024 22:42)

    ただただ うっとりしてしまう
    釘と木に色をつけただけなのに
    木に入ったひびが 並んだ釘が
    すーっと誘われて
    しずかな海に入り込んでしまいました

  • #2

    図工のみかた編集部 (土曜日, 26 10月 2024)

    ふくざき あや様

    コメントありがとうございます。

    >釘と木に色をつけただけなのに
    ほんとうに、ただそれだけなのに、Yさんの感じたことや考えたことに寄り添おうと思いながら見ていくと、静謐な海の世界に引き込まれますよね~。

    引き続きよろしくお願いいたします!