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第四十九回 きれいなあじさい

この作品は、季節の花を見て感じたことを基に、水彩絵の具で絵に表したものです。


 

 

見て、感じて、想像して

 

今年は夏至に梅雨入りとなりました。気候の変化はこれまでとはずいぶん違ってきています。5月に観測された夏日の中で運動会を経験し、「6月はもう夏」と感じている子どももいます。

そのような中でも、アジサイ、ドクダミ、ザクロ、クチナシなどの花が咲きほこり、にぎわっている校庭を子どもたちと歩き、この時期らしさを感じることができました。

子どもたちには、雨の音、土のにおい、草花の美しさ、不思議さ、自然界のいのちのにぎわいに心を澄ませてほしいと願っています。季節の折々に、見て、感じて、想像したことを基に絵に表す活動を取り入れるようにしています。

ガクアジサイや西洋アジサイを、様々なガラス瓶に活けて図工室にかざりました。子どもたちには、目の前のアジサイを見て感じたままにかき始めてもよいし、この時期だなあと感じる色で、刷毛やローラーなどを使いながら、自分の画面をつくってから表してもよいことを提案しました。


 

 

Hさんのあじさい

  

 Hさんは、ピンク、水色の絵の具をパレットで混ぜています。少しずつ白を加えて薄い紫色をつくろうと調整しているようです。できた色に、青を足し、さらに白を足し、時間をかけて濃い紫や薄い紫をつくりました。

 つくった紫の絵の具を指先につけ、Hさんは、ポンポン、ポンポンと身体が弾むように、軽快に画用紙の上に色をおいています。たくさんの点々をおいた後、その上に手でパッパッとダイナミックに水をかけました。そして筆で点々をぼかしているのです。Hさんにどんな感じがしているか尋ねると、「雨の感じの背景かな。」と教えてくれました。

 Hさんはその後、ガクアジサイの装飾花※1の部分を、青を足した濃い紫でいくつかかき、真花※2を筆先につけた絵の具で小さな点にして表しました。透明なガラスびんにも時間をかけています。透き通る感じをどう表そうか考えているのでしょう。たまたまガラスの花瓶に入っていたいくつかのビー玉を、いろいろな色でかいていくと、画面がぱっと明るく感じられました。

 私は、放課後の図工室でHさんの作品を見ていたら、右下にサインを入れるようにかかれた小さな透明な傘に気付きました。Hさんはどんな雨を感じていたのかな、と楽しく想像を広げました。

 後日給食に出た、手づくりの季節の和菓子「水無月」を味わいながら、これからむかえる夏を想いました。

 

※1装飾花・・・アジサイのガクの部分

※2真花・・・・アジサイの花の部分

 

 

 

「きれいなあじさい」

 

 Hさんが作品につけたタイトルは、「きれいなあじさい」です。完成した作品を一緒に見ながら、Hさんは以下のように話してくれました。

 

 

わたしはむらさきがすき。

あじさいのむらさき、黄色やきみどりのつぶつぶはきれい。

ゆびにつけたむらさきで、ぽちぽちとかいたら、どんよりした空と雨の感じになった。

ガラスもきれい。

ガラスがすきとおる感じ、奥がぼんやり見える感じ、ガラスのでこぼこの感じを工夫した。

カラフルなビー玉をたくさんかいたら、あじさいが明るくなった。

あじさいは、わたしの誕生日の花。

わたしはこの季節がすき。


材料・用具:

教師:紫陽花、画用紙、ローラー、刷毛など 

児童:水彩絵の具

《きれいなあじさい》 54×38cm 3年生 Hさん
《きれいなあじさい》 54×38cm 3年生 Hさん

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