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第五十回 るりいろのかわせみ

この作品は、2年生が「すきすき おえかき」の授業で、共用の絵の具を使い、思いのままに絵に表したものです。


 

 

絵の具の心地よさ

 

子どもたちが、絵の具でかく心地よさに浸り、思いのままに表しながら、自分のかきたいことを見つけていってほしいと願い、絵の具と出合う環境を大切に考えました。

色が透ける半透明の容器に、絵の具と水と水糊を混ぜ、子どもが絵の具の粘りを感じられる、少しとろみのある状態に溶いておきます。また、基底材となる段ボールは折り目やラベルがついているもの、穴やへこみのあるものなどを様々なサイズに切っておきます。どちらも自分ですきなものを自由に選べるようにしました。

まず子どもたちを側に集め、バケツに入っている太い筆で、好きな色をお皿に取り、段ボールにぬったり、簡単に線や点などをかいたりと演示して見せ、「絵の具でぬったりかいたりしながら、自分のかきたいことを見つけていく」ことを提案しました。


 

 

自分のすき、いい がたくさん

  

 Nさんは、同じ机に座っているHさんが「大きいのがいい!」と段ボールを選んでいるのを見て、「私も大きいの!」と一緒に探しています。Nさんは自分の気に入った大きさを選ぶと、次に絵の具のコーナーに行き「どの色にしようかな。ピンクがすき。黄色もとろう。」といくつかの色をお皿に取りました。段ボールの中央にピンクの絵の具でぐいぐいぬり始めました。その上に黄色を重ねて気持ちよさそうにぬっていくと、何ともきれいな淡いぼたん色の画面になりました。

 Nさんの目の前のHさんは、「新幹線、電車」とつぶやきながら、大好きな青と黒でかき始めます。そのとなりのSさんは画面いっぱいの大きなくわがた虫をかいています。Nさんは二人の様子を目にして、にこにこしています。そして、「次の色、どうしようかな~」と絵の具を取りに行きました。

 私は図工室を一回りしてNさんのところに戻ってくると、ボタン色の画面は緑色に変わっていました。Nさんは色を重ねて色が変化すること楽しむかのように、次は白をたっぷりとお皿に盛り、緑の上から重ねました。粘りのある絵の具は、にじむことなく色合いを残しながら画面の上で重なっていきます。

 Nさん、Hさん、Sさんの3人がそれぞれに自分のやりたいことをしている中で、Nさんは小さく「かわせみ」とつぶやきました。次にNさんは青と緑で、まだ乾ききらない白の画面にぬっていくと、「るり色だ!」と自分の画面に現れた色を見ながら深呼吸をするかのようにつぶやきました。

 私はNさんの絵にぐっと近づいて見ました。エヌさんがぬりこめた色は、ふっくらと優しい鳥の姿でした。その向こうにも木の枝にとまっている小さな鳥がいました。Nさんは自分の思いに合う「かわせみ」をあらわそうと、何度も何度も色を重ねながら納得のいく色や形を考えていたのでした。

 最後にかわせみの目やくちばし、足をかきいれると、ほっとした表情で筆をおきました。

 

 子どもたちがそれぞれに自分のすきなこと、いいとかんじること、かきたいことを探している時間は、本当に心地のよい空気で満ちています。

 

 

 

「るりいろのかわせみ」

 

 Nさんが作品につけたタイトルは、「るりいろのかわせみ」です。一緒に作品を見ながら、以下のように話してくれました。

 

 

大すきなピンクをさいしょにぬりました。きいろもすこしまぜたら、「にじかな?」

その上にみどりやきいろをぬったら「ジャングルだ!」

「かわせみ」をかこうとおもいました。

ジャングルの上に白をぬりました。

あおとみどりで、かわせみのあたま、どうたい、つばさをいしきしてかいたら、

「るりいろの、かわせみ」になりました。やさしいおかあさんです。

えだの上には「あまえんぼうのあかちゃんかわせみ」もいます。

 


材料・用具:

教師:共用の絵の具18色、PVA(水糊)、段ボール、筆(12号)、皿、バケツなど 

児童:ぞうきん

《るりいろのかわせみ》 52×44cm 2年生 Nさん
《るりいろのかわせみ》 52×44cm 2年生 Nさん