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第五十一回 かせきはっくつたんけんたい

この作品は、1年生が焼き物「じぶんのすき」の授業で、陶土を使って立体に表したものです。


 

 

「五本木焼」

 

子どもたちは粘土でつくるのがすきです。その粘土が乾燥、焼成などのプロセスを経て変化する面白さを体験してもらおうと、1年に1度、どの学年にも焼き物の題材「五本木焼」を取り入れています。

学年によって陶土の種類、成形の方法、焼成の仕方などを変えるなど、6年間で様々な焼き物の経験を重ねいます。


 

 

「じぶんのすき」

  

 1年生の図工は担任の先生が担当しているので、普段の図工の授業は教室で行われていますが、今日は「五本木焼」の日。1年生の子どもたちがきょろきょろ図工室を見回しながら入ってきました。

 子どもたちを側に集め、実際に演示しながら題材を手渡していきます。一人分の量の粘土を手のひらのせ、ヘラでたたくと、「ペタペタ」とヘラが土にはりつきます。次に乾燥した土では、「コツコツ」、さらに800度で焼いた土は「コンコン、カンカン」とヘラが弾むように跳ね返ります。音の違いを比べて聞かせると、「へえ~~」「お~~」、パチパチ拍手と歓声が上がりました。

 そして、土のかたまりを手のひらの中から指で引っ張り出したり押したりして形をつくりだして見せ「じぶんのすき」をテーマに表すことを提案しました。

 

 子どもたちは粘土を手にすると、「お、おもい!」「つめたい」「なにつくろう」「大すきな犬とくつろいでいるところにしょう」「弟のたんじょうかい。あ、だからふたつにわけておこう」などと思い付いたことを話しながら粘土に触れていましたが、土の感触に誘われていくように、いつの間にか教室がしんと静かになりました。

 

 Iさんは、とても小さな塊をいくつもつくっています。私は何の形かな、これをあとからくっつけるのかな、と思いましたが、まずは見守ることにしました。しばらくしてIさんのところに戻ってくると、先ほどの小さな塊はさらに数が増え、ひとつの形が少しずつ異なります。それらを粘土板の上に弧を描くように並べています。次に、粘土板に少し大きな塊をふたつつくり、その上へ少しずつぎゅっぎゅっと粘土を付け足し、だんだん高くしていきました。私は「立たせたいのかな。」と尋ねると、Iさんは黙って大きく頷きました。その眼差しに、「こうして自分の方法でつくりたいんだ。」という強い意志を感じ、「もし困ったことがあったら言ってね。」と伝え、Iさんの考えに寄りそうことにしました。

 

 あっという間に2時間がたち、クラスの子どもたちが活動を終えて教室へ戻っていきましたが、Iさんは休み時間も図工室に残り、まだ一人でつくり続けていました。私はIさんの横にすわり、「立たせたね。すごいね!」と声をかけると、最後に竹串でにっこりと顔をかき作品を完成させました。


 

 

「かせきはっくつたんけんたい」

 

「作品のお話をきかせてくれる?」と尋ねると、Iさんは誇らしげに頷きました。どっしりと立っているのは「自分」で、小さな塊は「恐竜の骨の化石」なのでした。

 作品につけたタイトルは、「かせきはっくつたんけんたい」です。自分が化石を発掘している様子を表したのでした。そしてとつとつ、と自分のすきなことを話してくれました。

 

かせきがすき 

大むかしのこと おもうのが すき 

きょうりゅうがすき のってみたくなる。

つくるのがすき


材料・用具

教師:陶土250g(信楽)、厚紙(紙ろくろ:形が立ち上がってきたら粘土をのせ、回しながら仕上げていくために用意した)、粘土板、へら、竹串など 

児童:ぞうきん

《かせきはっくつたんけんたい》 16×15×9cm 1年生 Ⅰさん
《かせきはっくつたんけんたい》 16×15×9cm 1年生 Ⅰさん