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第五十二回 夕日の思いでしゃしん

この作品は、「光のさしこむ絵」(日本文教出版 図画工作3・4下 p.44-45)の授業で3年生が表した作品です。光を通す材料を組み合わせて、思い付いたことを絵に表す活動です。今回は、お花紙を一度透明シートに貼ってから、はがして基底材にすることにしました。


 

 

「さわり心地を楽しむ」

 

お花紙は、様々な感触の変化を楽しめる材料です。子どもたちには、お花紙の形や色、さわり心地を楽しみながら透明シートに貼り、光を通した感じを生かして、思い付いたことを絵に表していくことを提案しました。お花紙で具体的にものの形を表していくというより、時間や場所、季節などを何となく感じるようなイメージの、自分だけの画面をつくろうと呼びかけました。

 

さっそく子どもたちは教室中央にあるお花紙のコーナーから好きな色を選びます。液体のりをお花紙の上から刷毛でしみこませていきます。のりが付いたとたん「色がすきとおった!」「重ねたら色がまざった!」「もっともっと貼ろう」と、お花紙の形や色を考え、変化していく材料の感触を楽しんでいきます。

Hさんは、初めに青色や水色、白、黒などを重ねたり、少しずらしたりしながら置き方を考えて、シートの下の方に貼りました。上の方は薄だいだいやピンク、オレンジ、赤、黄などの温かみのある色を重ねています。たくさんのお花紙と液体のりで、透明シートはずっしりと重くなっていました。「来週はどうなるかな~」と乾燥棚に入れました。


 

 

「形や色などの感じから」

  

 次の週はいよいよ乾いたお花紙をはがしていく活動から始まります。基底材になるので、やぶけないように周りからそっとはがしていきます。ある子どもが、「お花紙とシートの中に手の平が入れば、そこからするするはがれるよ!」と発見して、みんなに伝えていました。

 Hさんは、はがしたお花紙を手のひらでなぜ、「つるつる~」「ざらざらだあ」と表と裏の感触を比べています。自分が好きな方に絵をかいていきますが、Hさんは、つるつるの方を選びました。

 

 のりをぬった面は手漉き和紙のようになり、シートに接していた面はつるつるで光沢のあるつや紙のようなさわり心地になります。

 Hさんは青い色の感じから、海のイメージをもったのでしょう。ペンを使い、くじらや魚など海の生き物をどんどんかいていきます。次に、画面中央にうねうねと重なり合うように、色を変えながらたくさんの曲線をかきました。私がこの線はどんな感じがしているかHさんに尋ねると、「海の強い波」と教えてくれました。その後、たくさんの人や陸の生き物、船などをかいて、作品を完成させました。

 

 

「夕日の思いでしゃしん」

 

 作品には「夕日の思いでしゃしん」とタイトルがつけられました。

 Hさんは絵をかきながら、幼いころに見た海や、おけいこの帰りに見たきれいな夕日などを回想していたのでした。Hさんの、いいな、楽しいな、きれいだなと感じた思い出がたくさんつまった作品です。

 以下、Hさんが話してくれたことです。

わたしが小さいころに、かぞくで行った海です

生きものがたくさん、たのしい

しぜんは、たのしい

海のなみがつよかったです

大きいなみがくると、おにいちゃんはジャンプしてあそんでいます

ピアノのおけいこのかえりに見た夕日もきれいだった

 


材料・用具

教師:京花紙、透明シート(B4ラミネートシートの粘着面をはがし、テープでつなげて倍のサイズにして使用)、液体のり(PVA)、ポスカ、サインペン、ラメグルー、刷毛等 

《夕日の思いでしゃしん》 60×45cm 3年生 Hさん
《夕日の思いでしゃしん》 60×45cm 3年生 Hさん

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