この作品は、2年生の子どもが題材「おもいでカメラ」で表した作品です。板材に絵をかくことを楽しみながら、思い付いたことを工作に表す活動です。
「板材にかく心地よさ」
板材を基底材にして、楽しかったことや心に残っている思い出を絵に表し、その瞬間をとらえたカメラをつくることを提案しました。タブレット端末や携帯電話の時代に生きる子どもたちにとって、カメラ(写真機)は身近ではなくなっているかと思い尋ねましたが、カメラは子どもたちの身近にあるものでした。
板材に色をぬったり、かいたりするのは心地よいものです。水性クレヨンでかいていく時に、木目の肌触りを感じたり、指で色をこすると出てくるつやの感じを楽しんだり、紙とは異なる心地よさがあります。
毎年、東京奥多摩の間伐材を申請しています(※1) 。大きな段ボール2個が届き、開けるまでどんな木材が入っているか分からない「福箱」です。子どもたちはこの中から、絵をかきたい板を探し出します。
※東京都産業労働局では毎年度「多摩産材の利活用事業」として、申し込みのあった学校に対して無料で段ボール2箱分の木片を提供する取組みが行われています。詳細はこちらでご確認くださいhttps://mokuiku.metro.tokyo.lg.jp/news/2024/20240605_03.html(URLは令和6年度の案内となります)。(編集部)
「かいたり、つくったり」
絵をかいてからカメラをつくるよう提案をしましたが、先にカメラをつくって、その形から絵にかきたいことを発想する子どももいます。私は、子どもの考えるだんどりに、ゆるやかに対応して見守ることにしました。
Tさんは厚さ2cm程の長方形の板を選びました。片面は平坦ですが少しざらざらしています(左)。反対の面は、加工して切り落とした凹凸のあるものです(右)。Tさんは、平坦な面の方に水性クレヨンの赤や橙、黄色などで点々を散りばめたり、色を重ねてごしごしぬったりしていきます。私は紅葉のイメージなのかなと想像してTさんに尋ねると、「休日に祖父母のいる鎌倉に行き、紅葉ハイキングをした時のこと」と話してくれました。しばらく子どもたちの活動を見て回り、Tさんのところに戻ってくると、左上に小さく山のような形がかかれています。
絵をかきあげると、Tさんは小さな角材や切り落としの板材のコーナーから、様々な形をした材料を選びました。重ねたり、また材料を取り替えに行ったりして、納得がいくまで置きかえて接着していきました。レンズやシャッターのついたカメラに、さらに色をぬったりかいたりしています。Tさんは時々手を止めて、つくりつつある作品をじっと見て、斜めや反対側からも見ています。かいた絵(左)とカメラ(右)がどのように関係しているのか、私はとても楽しみでした。
《ふじもわらったこうようたち》 14×10×8cm 2年生 Tさん
「ふじもわらった こうようたち」
完成した作品には「ふじもわらった こうようたち」とタイトルがつけられました。
Tさんが作品について話してくれた言葉は、ひとつひとつが自分らしい言葉で、私はとてもいとおしく感じられました。
私は、今回のように用途をきっかけに表したいことを見付ける工作に表す活動でも、子どもの思いがのびやかな形や色で現れ立ち上がっていくことを大切にしたいと、いつも考えています。
鎌倉で山の上までのぼった時、下には紅葉で、上には富士山が見えました。
「わー!きれいだなあ」と思いました。
毎年、夏に富士山の見える所に行く時は、「富士だな」と思うけれど
紅葉と富士山は「奇跡だ」と思いました。
だから「ふじもわらった」という言葉にしました。
カメラの右はしにあるレバーは、光を調節するものです。
レンズは段階を増やしてピントを合わせることができます。
紅葉と富士山が目の前に広がって、一瞬「パッと光と光が合わさる」ところです。
カメラには砂漠や太陽、毎日食べる大好きな梅干しの種、地球をイメージして絵をかきました。
材料・用具
教師:間伐材の板や角材、水性クレヨン、木工用接着剤等
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