大学校から小学校へ
「図工準備室」も完成し、活用の幅が大きく広がった金ケ崎芸術大学校。今年の夏休みには、新たなプロジェクトとして「小学生ウィーク」を企画した。これは、読書感想文や自由研究などの夏休みの宿題(大物)をベースにした「開校日」を集中的に開催することで、悩める小学生をサポートしようという試みである。
さらに、昨今の情勢でなかなか遠くにお出かけできない子どもたちに、身近な場所で特別な体験をすることで、地域の魅力を再発見することも目指した。その一環として、「おとまりの時間」と題した宿泊体験ワークショップも計画。江戸時代の古民家で、テレビもエアコンもないちょっと不便な生活を過ごしてみるイベントだ。これまでも、大学生はたくさん泊まってきたが、果たして小学生にはどのように受け入れられるのだろうか。
われわれの予想をはるかに上回り、「おとまりの時間」には予約が殺到。あっという間に定員が埋まってしまった。意気揚々と準備を進めていた矢先、新型コロナウイルスの感染が再拡大。やむなく一部のプログラムを取りやめ、規模を縮小しての開催となった。
読書の時間
夏休みの宿題ランキングがあれば、おそらく上位にランクインするだろう読書感想文。1冊の本を読んだ上で、原稿用紙数枚分の感想をしたためるのはなかなかにハードである。ここではそのような課題に真正面から向き合う。
課題図書は、前回の「図工のあるまち」でも取り上げた『みちのく妖怪ツアー 古民家ステイ編』。実際に古民家で読むと雰囲気もばっちり⁉ さらに、講師として著者のお一人である野泉マヤさんをお招きした。その本を書いた人と一緒に読書感想文を書くという贅沢な時間である。
時節柄、あまり積極的な広報はできなかったものの、チラシを見た地元の4年生と5年生が一人ずつ(うち1名はオンライン)参加してくれた。
筆者が作成した簡単なワークシートを使いつつ、まずは本の内容を共有することから始める。この本には人間のみならず様々な妖怪たちも登場するため、それぞれに気になったキャラクターをふりかえる。どうやら福島の「沼御前」が印象的だったようだ。
ネタバレになるのであまり細かくは書かないが、この本は東北六県の名前が付けられた古民家に子どもたちが宿泊体験に訪れることから物語が始まる。そして、それぞれの家で各県ゆかりの妖怪と遭遇し、一人また一人と消えていく。
児童書とは言え、大人が読んでもそれなりに怖い。さて、子どもたちはこの本を読んでどのようなことを思ったり感じたりしたのだろうか。
岩手の家にて読者と著者の不思議な邂逅となった。
図工の時間~ポスターを描こう~
夏休みの図工の宿題の定番にポスターがある。とは言え、図工の授業で「ポスターの描き方」を学ぶ機会は意外と少ない。いつも描いている絵とポスターはどこが違うのだろうか。今回は、金ケ崎芸術大学校が毎年秋に開催している「城内農民芸術祭」のポスターをつくることを目指す。
講師を務めたのはグラフィックデザイナーの石井一十三さん。石井さんには今回の「小学生ウィーク」のチラシもご担当いただいた。当初は現地で直接ご指導いただく予定だったが、感染拡大の状況を踏まえて画面越しでのご対面。ちなみに、参加者は小学校1年生から4年生までの4名。みんな図工好きとのことで嬉しい限り。
まずは、石井さんから「ポスターって何だろう」と問いかける。この流れの中で「誰かに伝えること」の大切さを共有した。続いて「今回のポスターでは何を伝えるんだろう」ということで、今年の「城内農民芸術祭」について説明することに。小学生にも理解できるようにコンセプトを伝えるのも一つのチャレンジである。分かりやすいキーワードとして、「図工のお祭りであること」と「緑をテーマにすること」に焦点を当てた。
ちょうど石井さんが現地にいられない状況を活かして、子どもたちに現場の様子について紹介してもらうことに。「庭に植物がたくさんある」「木の柱」「古い家」など、それぞれの視点から金ケ崎芸術大学校の特徴をレポートしていく。「その場所の素敵だなと思うところをまた別の誰かに伝えてみよう」と声をかけ、製作スタート。
机の上には「図工準備室」から様々なアイテムを用意して並べておいた。色鉛筆、クレヨン、絵の具、ペンなどの描画材。折り紙や和紙、糸やスポンジなどの材料。さらには「漆の時間」に使っている螺鈿まで。それぞれが思い思いにそれらを手に取り、自由自在に描き出す。縁側から庭の様子を観察したり、外に出て草花やセミのぬけがらを採集したり、この場所ならではの作品が仕上がっていく。
完成した作品は、そのままスキャンして「城内農民芸術祭」のチラシやポスターに使わせていただく。まちなかに子どもたちの図工の成果物が溢れるのが楽しみだ。ちなみに、芸術祭の期間中には大学校にてポスター原画展の開催も予定している。
(後半に続く)
プロジェクト紹介
城内農民芸術祭2021
今年で3回目を迎えるアートプロジェクト「城内農民芸術祭」。今回は特別企画として「土と緑のミュージアム」をテーマに、展示やワークショップなどを行います。以下に主なプログラムをお知らせします。
〇村山修二郎 緑の美術展
植物をテーマに表現活動を行う村山修二郎さんの作品を侍住宅で展示します。
会期:2021年10月2日~11月3日
会場/開館時間:旧菅原家(旧狩野家)侍住宅 10:00~16:00 ※土日祝日のみ公開
土合丁旧大沼家侍住宅 9:00~17:00 ※月・火曜日は休館
〇生活者工房陶芸部「土と暮らせば」
金ケ崎芸術大学校の周辺で採集した土で器をつくり、お茶会を開きます。
日時:10月2日(土)・10月30日(土)・11月7日(日)・12月25日(土)
各回 10:00~16:00
参加費:5,000円(全4回分・器2つ分)
〇ワカツキ模型「ジオラマでお庭づくり」
金ケ崎芸術大学校のお庭を眺めながらジオラマの技法を用いてお庭をつくります。
日時:10月30日(土)14:00~16:00
参加費:500円(材料代込み)
℡:080-7225-1926(担当:市川)
メール:kanegasakiartcollege@gmail.com
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