· 

第十六回 金ケ崎芸術大学校 第八回「小学生ウィーク」後半

図工の時間~植物で描こう~

 

 

 金ケ崎芸術大学校が期間限定で小学校になる「小学生ウィーク」も後半へ。

 

(前半はこちらから)

 

 今年の「城内農民芸術祭」の参加作家でもある村山修二郎さん[i]を講師に迎えて「植物で描こう」というプログラムを実施した。

 

 植物をテーマに表現活動に取り組む村山さんは、草や花を紙に直接擦りつけて絵を描く「緑画(りょくが)」を考案し、実践されている。今回は、その手法を体験するワークショップを行った。

 

 時節柄あまり積極的に広報できなかったのは残念だが、事前に申し込みのあった小学2年生1名と保護者1名、そして金ケ崎芸術大学校染めっ科講師のふなこしちづ子さんと大学生数名が参加してのスタートとなった。

 

 まずは、村山さん自ら作品について説明。「緑画」という言葉だけではイメージが膨らまなくとも、写真を見れば一目瞭然である。とは言え、どのような色が出るかはご本人も実際にやってみないと分からないとのこと。また、植物をそのまま画材として使っているため、色味も時間とともに変化するらしい。人のコントロールを超えたところに存在する作品の魅力を感じた。

 

 

植物で描こう―村山修二郎さんによる「緑画」のデモンストレーション
植物で描こう―村山修二郎さんによる「緑画」のデモンストレーション

 そしていよいよ製作開始。

 画用紙と和紙とケント紙から支持体を選び、思い思いに「緑画」に取り組む。大学校の庭園は多種多様な植物が文字通り「よりどりみどり」。「この葉っぱはどうかな」「この花びらはどんな色になるんだろう」……子どもも大人も一緒になって庭の隅々まで探索していた。

 

 それぞれが見つけた植物を手に、今度は地面に紙を置いて擦ったりたたいたり。小学生の参加者は石も使って表現を工夫している。次第に白い紙にいろいろな色が浮かび上がってくる。「藍はやっぱり発色がいい」「百日紅の花びらは紫色になるね」など、たくさんの小さな発見があった。

 

 最後は植え込みの上に作品を並べてみんなで鑑賞した。

 

 

 

植物で描こう―大学校の敷地内で植物探し
植物で描こう―大学校の敷地内で植物探し

植物で描こう―畑もアトリエに
植物で描こう―畑もアトリエに
植物で描こう―葉っぱと石で「緑画」を製作中
植物で描こう―葉っぱと石で「緑画」を製作中

植物で描こう―最後はみんなで鑑賞の時間
植物で描こう―最後はみんなで鑑賞の時間

 

 

おとまりの時間~1日目~

 

 小学生ウィークのフィナーレを飾るのは「おとまりの時間」。前回取り上げた「読書の時間」の課題図書でもある『みちのく妖怪ツアー 古民家ステイ編』[ⅱ]にあやかり、古民家ステイプログラムとして企画した。物語ではぞくぞくと妖怪が登場したが、現実はいかに。新型コロナウイルスの感染拡大状況も踏まえ、参加人数と実施回数を減らしての開催ではあったものの、1年生から5年生まで7名が参加してくれた。

 

 集合は夕方の5時。少し緊張した表情の子どもたち。簡単にガイダンスをしてから、家の中を探検した。せっかくなので隠し扉のギミックも用意しておく。扉の先は「図工準備室」だ。いろいろな道具や材料が置いてある空間を見て、さっそく何かを思いついた様子。そのまま裏の畑で野菜も収穫した。

 

 夕食は各自でお弁当を持参。ご飯を食べたら花火、をしたいところではあったが、外はあいにくの雨模様。プロジェクタとスクリーンを使って即席の映画館を立ち上げ、みんなで横になりながら鑑賞した。

 一方、図工準備室でもくもくと何やらつくっている男の子も。これもまた、それぞれの時間を過ごす金ケ崎芸術大学校らしい風景。いつの間にか「秘密基地」という新たな呼び名もできたようだ。

 

 そうこうしているうちに夜も更けてきた。みんなでボードゲームをしながら就寝の準備。ドタバタの中で1日目が過ぎ去っていった。

 

おとまりの時間1日目―家の中を探検中
おとまりの時間1日目―家の中を探検中

おとまりの時間1日目―図工準備室で生まれたもの
おとまりの時間1日目―図工準備室で生まれたもの
おとまりの時間1日目―図工準備室の1コマ
おとまりの時間1日目―図工準備室の1コマ

 

 

おとまりの時間~2日目~

 

 と、床についたのも束の間。朝7時前には既にごそごそと子どもたちが動き出す。もう少し眠らせてほしいなという希望もむなしく、2日目もスタート。8月とは言え少し涼しい朝だ。布団をたたんだら、小雨のぱらつく中、みんなで朝のお散歩へ。静かな伝建群を散策した。

 

 

おとまりの時間2日目―朝のお散歩
おとまりの時間2日目―朝のお散歩

 お散歩から戻ったら朝ごはん。昨日、みんなで収穫した野菜も食卓に並ぶ。ご近所さんからいただいた食材も含め、野菜だらけで大丈夫かなという心配も何のその。ご飯のあとは食休みも兼ねて自由な時間。「秘密基地」に入り浸って手を動かす子どもたちや本を読む子どもたち。それぞれの過ごし方を見つけていく。

 

 

 

 

おとまりの時間2日目―図工準備室の1コマ
おとまりの時間2日目―図工準備室の1コマ

一区切りついたら「そうじの時間」ということで、みんなで使った場所をきれいに片付ける。普段は大変な庭の草むしりも、子どもたちにとっては立派なワークショップに様変わり。さりげなく環境整備のお手伝いもしてもらった。お駄賃として大学校の一画にある駄菓子屋コーナーからお好きな駄菓子をプレゼント。

 

 

おとまりの時間2日目―「おそうじの時間」で草むしり中
おとまりの時間2日目―「おそうじの時間」で草むしり中

 お菓子を食べながら、二日間の思い出を絵日記にしたためる。

 雨も上がって青空も見えてきたので、最後は向かいの公園に出て思いっきり遊ぶ。さっきまでつくっていたソフトグライダーを飛ばしたり、モルックをしたり。1泊2日の間にすっかりコミュニティが仕上がっていた。

 

 

 

 夏の幻のような1週間。

 参加した子どもたちの中にはどのような記憶として残っていくのだろうか。またどこかで再会できる日が楽しみだ。

 

 

 

 

おとまりの時間2日目―公園で遊ぶ
おとまりの時間2日目―公園で遊ぶ

 

 

プロジェクト紹介

 

城内農民芸術祭2021 開催中

現在、金ケ崎にて開催中のアートプロジェクト「城内農民芸術祭」。今後は以下のプログラムを予定しています。

 

〇図工の日

 漆芸、陶芸、金工などの暮らしの中の工芸から、プラモデル、電子工作まで、多種多様なものづくりを体験できる一日です。

 日時:2021年10月31日(日)10:00~16:00

 

〇裏の畑の収穫祭

 大学校の裏の畑から藍の種を収穫します。また、収穫への感謝と土地の豊饒への願いを込めて郷土芸能も奉納します。

 日時:2021年11月3日(水・祝)11:00~16:00

 


 

[i] https://www.akibi.ac.jp/teacher/6996.html

[ⅱ] 『みちのく妖怪ツアー 古民家ステイ編』佐々木ひとみ 作野泉マヤ 作堀米薫 作 東京モノノケ 絵 2019 新日本出版社 https://www.shinnihon-net.co.jp/child/detail/code/978-4-406-06432-3

 

図工のあるまち

そのほかのコンテンツはこちらから

 

    第7回<金ケ崎芸術大学校>第9回