そぞろみ部とは
いろいろな場所をそぞろ歩きながら造形的な見方や考え方を使って身の回りのあれこれを眺めてみるまったり系部活動。ここ数年はお正月恒例の活動報告となっているが、今年は年始の忙しい駅にて人波をかいくぐりながらこっそりそぞろみた。
ミュージアム・ステーション
最近、各地の駅で赤い鉄橋を列車が走るロゴを見かける。鉄道開通から150周年を迎えた2022年にあわせてつくられたものらしい。この一環として、東京ステーションギャラリーでは「鉄道と美術の150年」と銘打った企画展も開催されていた。
これを見がてら旅に出るべく、埴輪に見送られて前橋駅を出発。両毛線と高崎線を乗り継いで東京へ。
レンガ造りの駅舎も見応え十分だが、展示内容も目からうろこ。東京駅構内に福沢一郎の原画をもとにしたステンドグラスがあることを知る。これまで何度も来ていたものの、一度も目にしたことはなかった。現在は移設されて京葉線方面にあるとのことで、複雑なダンジョンを進むこと約10分。エスカレーターを降りた先に、色鮮やかな作品が輝いていた。とはいえ、立ち止まり鑑賞する人は誰もいない。駅に眠る思いがけない作品との出会い。皆さんも探してみてはいかがだろうか。
矢印を探せ!
駅を行き交う人々にとって、矢印は大事な道しるべ。いつもは目的地を目指して足早に通り過ぎてしまうところだが、今日は電車を一本見送って矢印を探してみることにした。新幹線を含む多くの路線が乗り入れる東京駅では、色も形も様々な矢印があの手この手で主張する。先ほどの京葉線に向かう道中で見つけた矢印は、トリックアートのように影がかかれており、床面から浮かび上がっているように見える。新幹線に向かう階段で見かけた矢印は、ある視点から見たときに形が完成する。歩行者の動きにあわせて進むべき方向を示す仕掛けだ。ファーレ立川で見たフェリーチェ・ヴァリーニの作品を彷彿とさせる。見上げれば天井にも。知らず知らずのうちに、われわれは矢印に歩かされているのかもしれない。おかげで迷うことなく新幹線に乗って向かうは東北。乗り換えの一ノ関駅では、ストライプ柄の矢印を発見した。
駅から広がるまち
矢印に従ってたどり着いた駅の改札口は、人々の暮らすまちの入り口でもある。そこでは、線と点をつないだ抽象的な路線図が、具体的なイメージを伴いながら拡散していく。
両者を結びつけるのは多彩なグラフィックデザイン。一ノ関駅でも、岩手のおいしい海の幸をこれでもかと押し出した巨大な広告が目に飛び込んできた。ポスターの連張りも駅らしさを醸し出す。あるいは、地域ゆかりのモチーフを盛り込んだご当地壁画もそぞろみポイント。今回の目的地である金ケ崎駅の自由通路にも、地域の名所を散りばめたモザイク壁画が掲げられている。「金ケ崎芸術大学校」がある重要伝統的建造物群保存地区のみならず、郷土芸能の鹿踊りや地域行事のむかで競走に至るまで、バランスよく配置される。言わずもがな、まちにはわれわれの行き先をわかりやすく導いてくれる矢印はない。さあ、今年はどこへ向かって歩こうか。
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